私はパートでお年寄りの歯を磨く仕事をしている。
施設に行く事が多いけれど、この仕事をする前は「ご高齢の方々が少しでも美味しくご飯が食べられるようになれば」とか、「もしかしたら口腔機能が上がって(胃婁の方が)口から食べられるようになるかもしれない」などと思ってやっていたものです。
勿論それは今でもゼロではないけれど、実際の話、現実的には難しいものだと言うことにも直面している。(本の中では在宅の場合、家族が協力して機能が向上する事はあるらしい。残念ながら私はまだ経験無し。)
そもそも施設に入るお年寄りというのは認知症があったり、自分自身の事を一人で出来なくなってきている人が圧倒的。
私の仕事は入れても月に四回、つまり週一回の訪問になるんだけど、ぶっちゃけ週一の歯磨きだけでは足らんのよ。
結局は歯は毎日磨かなくては口腔内の衛生状態は上がっていかない。
が、しかーし、自分自身の事が出来なくなってきているお年寄りの方々、「歯は自分で磨いている」って言っても限度があって、前歯を2、3回歯ブラシでこすって終了、なんてパターンはざらにある。動く事すら面倒で、歯磨きが出来ない人はもっといる。
って事で頼りになるのがその施設のスタッフの方々なんだけど…。スタッフの方々がせめて歯を磨いていたら良いのだが、これがまたそうもいかない。
何故ならスタッフの方はめちゃくちゃ忙しい。
私、この仕事をするようになって初めて介護施設の内側に入り、その様子を見る様になったんだけど、介護職の人手不足とハードさは想像以上、というのが本音。
もう、午前中なんて、ずーーーーーーーーーーーーっと動きっぱなしで、掃除、洗濯、オムツ交換、お風呂、で、時々呼ばれ相手をする、お茶・・・・・、とそれは続く。
挙句の果て、穏やかな方だとまだしも、そんな方ばかりでもなく大きな声を上げる人もいれば暴れる人だっている。
介護職の方々、本当にお疲れ様です。尊敬しています、マジで!
で、そんな中ついつい後回しにされてしまうのが口腔ケア。口腔の汚れは全身に悪影響ですよ、誤嚥性肺炎を防ぐにはお口の中の菌を減らす事が大切ですよ…。
そんな事は百も承知で、でもマジ手が回らん!と言った現実がそこにはあるわけです。
しかも今のご高齢の方々というのは、口の中を綺麗に保つ、と言いう習慣が少なかった方たちが多い。治療だって今はなるべく歯を残すような治療だけど、昔は抜きましょう、が主流だったようだし。
なので「歯磨き?歯はほぼ無いわー、ふんっ」みたいに軽くあしらわれる事もあり、こちら側としては非常に残念な現実なんだけど、口腔内の重要度は低めである場合が多い。
あっ、でも介護施設のスタッフの方々が皆そういう訳ではないですよ。口腔ケアを頑張っていらっしゃる所もあります!そういう所に行くとね、もうめっちゃ嬉しい。
日本は欧米に比べてあまり歯の事を気にしないって言うんだけど、何でだろう、と思った時期があったんだけど、ある時ラジオを聞いていたら興味深い内容が。
それは
「日本人(アジア人)は相手の表情を読む時、目に注目し、欧米人は口に注目する」
というもの。良く日本では「目は口ほどに物を言う」なんて言うじゃないすか。あれですよあれ。目の表情(?)を大事にする。
で、逆に欧米人は表情を表すメインが「口」なんだそう。あー、確かに向こうの人ってめっちゃ歯を出して笑っているイメージあるよね。でアジア人は口を閉じて微笑むような笑いをするイメージが私にはある。
ラジオではコロナ禍で何故欧米の人は早々にマスクを外し、日本人はマスクを着け続けるのか、という問いに専門家が答えていたんだけど、日本の同調圧力だけの話ではなく、欧米人にとって「口を隠す」という事はある意味恐怖に近い、という興味深い話をしていたのよ。日本にあてはめるのであれば、皆サングラスを付けている、みたいな感覚らしい。確かにね、相手の目が見えない状態って不安感あるかも。
で、その話で納得したわけですよ。
ああ、だから欧米の人は口腔ケアに熱心なのかと。まあ医療保険うんぬんの話もあると思うけど、大きく口を開けて笑った時に歯がガタガタだったり、歯が汚れていたりしたら相手に不快な思いさせちゃうし、自分の評価もガタ落ちだもんねえ。
そして歴史的に見ても日本は口を隠して笑う文化だしね。
って事で納得!
な訳ないだろ(笑)。
やっぱり文化だろうが文化じゃなかろうが、口の中は綺麗にしておくに越したことはない!
って事で次回は口腔ケアをする時、暴れる103歳とありがとう、といってくれるおばあちゃんの違いについて考察してみようと思う。
もうね、ほんとうにすごいのよ。